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「いつか自分がこの世を去るとき、子供や配偶者に何を残せるか」

「いつか自分がこの世を去るとき、子供や配偶者に何を残せるか」という課題は、年を取るにつれて誰しも一度は考えたことがあると思います。多くの資産を持っている方であれば、それらを残してあげたいと思うことはごく自然です。

今まではお子さんの立場に立って、親御様の死とそれに伴う相続税にどう対応するかを書いてきました。今回は、「ご自身」が「残されたご家族のために」やっておくべき相続税対策について書いていきます。相続税は残されたご家族にとって、大きなリスクになる可能性があります。亡くなった後家族のために、納税資金をどう準備しておいてあげるか、できる限り財産を圧縮し納税額を減らしておいてあげられるか。ということも考えておかなくてはなりません。

相続対策の心得~対策の目的をはっきりさせよう~

相続対策は、以下の順に目的を分け、1つひとつ確実に準備と対策をする必要があります。

対策の目的


①家族の遺産紛争の可能性を未然に防ぐ
②家族の手続きの手間を省いておく
③家族の相続税負担を軽くする
④家族が相続税を納税する際の資金を準備する




それぞれ①②③④のフェーズごとに、何のために対策をするのか目的をはっきりさせ、実行していきましょう。またこの中で最も大切なことは①であると考えています。

相続対策で最も喜ばれることは、あなたが亡くなった後もご家族(ご親戚)が仲良く暮らしていける状態を維持してあげることです。それなくしては、いくら制度を使っても相続税対策はうまくいきません。逆に②③④は①に繋がりますので、各項目をしっかりチェックしてください。


家族の遺産紛争の可能性を未然に防ぐために…

まずできることは「遺言書の作成」

死後残される遺産を、誰にどれくらい残すかは最低限決めておいた方が良いでしょう。遺言で、家族各々の相続分を決めておくことで争いを防ぐことが出来ます。また、家族以外のお世話になった人に財産を残す、特定の財産を孫の代まで引き継いでほしいなど、細かい希望がある場合も遺言書作成をお勧めします。

遺言書がない場合は、法定相続人全員による遺産分割協議で全員の合意がないと遺産分割ができません。特に分割が難しい不動産や自社株式などが財産に多い場合は、遺言書がない場合、事実上分けられない財産を誰がどの程度相続するのかでトラブルが起こりえます。トラブルを回避のためにも、最低限遺言書の用意は進めておきましょう。

必要によって「遺留分の放棄」や「自社株式の遺留分からの排除」等の制度活用を考えましょう

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外に相続人に認められる最低限の遺産の取得割合です。例えば、あなたが会社経営をしており、遺言で跡継ぎになる長男に遺産を集中させたいと願っても、配偶者や長男以外の子どもにも、最低限の取り分が保障されるよう遺留分が認められます。

この場合、配偶者や長男以外の子どもが受遺者となる長男へ「遺留分侵害額請求」をすれば、長男は彼らに対して遺留分に相当するお金を支払わなければなりません。この構図が大きなトラブルへ発展する可能性が高いので、遺言で特定の人に遺産を集中させたい場合は、遺留分対策をしておかねばなりません。そこで利用されるのが「遺留分の放棄」です。

遺留分の放棄とは、遺留分の権利者が家庭裁判所に遺留分の放棄を申し立て、その権利を自ら手放すことを言います。遺留分を放棄すると遺留分侵害額請求ができなくなるので、不公平な遺言を残しても遺留分トラブルが発生する可能性が少なくなります。

また、同様に後継者に自社株式を集中して相続させたい場合、自社株式を遺留分の計算から排除する「自社株式の遺留分からの排除」という制度もあります。

いずれにしても、制度を使う際は遺留分権利者がこれを「受け入れてくれるか」が大きなポイントになります。遺留分の放棄を十分に納得してもらうために受遺者以外の方々への経済的支援や、なぜ放棄してほしいのかの理由を明確にしておくことが重要です。もちろん、不公平感を払拭する精神的なサポートも必要となるでしょう。

家族の手続きの手間を省くために…

これは以前のコラムにも書きましたので、詳しくはリンクより詳細をご覧いただければと思いますが、大きく分けて下記のようなことがあげられます。残されたご家族が、なるべく相続手続きにかかる手間を省けるよう、対策しておきましょう。

■遺産を整理し財産目録を作成しましょう
■遺言書の有無や保管場所について知らせておきましょう
■戸籍を収集し始めましょう
■不動産の名義を確認しておきましょう

家族の相続税負担を軽くするために…

ご家族が争わない形で、誰にどのくらいの相続をするかを決めたら、続税の負担をできる限り軽くしてあげる方法を考えていきましょう。相続税を軽くする方法としては、大きく下記の3つがあげられます。

■財産を減らして(圧縮して)納税額を下げる方法
■財産の評価額を下げて納税額を下げる方法
■相続税のしくみをうまく利用する方法


多くの方法があるので、今回は代表的なものを何個か取り上げてみます。


財産を減らして(圧縮して)納税額を下げる方法

①暦年贈与
相続税の対策で最も有名な対策は生前贈与です。その中の「贈与税」は、年間110万円の基礎控除があり、範囲内での贈与には税金がかかりません。(※年間110万円を超えたら課税)贈与できる財産に制限はなく、現金や預貯金など金融資産の贈与は簡単に手続きできます。

たとえば子4人孫6人(合計10人)にそれぞれ1年間で100万円ずつ贈与すると、贈与税はかからず(贈与税の基礎控除額の110万円以下のため)1年間で1,000万円、税金を支払うことなく贈与することができます。10年で1億円、20年で2億円の財産を税金ゼロで移すことが可能となります。この方法を暦年贈与といいます。

そのほかにも、結婚・子育て資金贈与の一括贈与や、子や孫に対して教育資金の一括贈与で一定額非課税にできる方法もあるので確認が必要です。生前贈与は早めから開始し、長い時間をかけて財産を分けていくことをお勧めします。

②住宅取得等資金の贈与税の特例
20歳以上の子や孫が居住する住宅の購入/リフォームを行う際、住宅資金の援助が一定額まで非課税になります。住宅取得資金贈与は暦年贈与の基礎控除110万円か相続時精算課税制度の特別控除2,500万円との併用も可能です。

③お墓など非課税財産を購入する
相続税法には、「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝しているもの」は「相続税がかからない財産」と記載されています。生前にローン等を組まず、お墓を現金一括で購入することで財産を圧縮できます。ただ、死後の購入や、生前の購入であっても代金が未払いの場合、骨とう品(金の仏像など)としての価値があるものは、非課税財産として認められないこともあるので注意しましょう。

④財産を寄附する
中には、遺産を公益団体や国、地方公共団体に寄附したいと考えている方もいらっしゃると思います。遺産を寄附した場合は、寄附した金額に対して相続税の課税対象から外す特例があります。しかし、要件を満たさなければ特例を受けられないので要件を確認してから行いましょう。

財産の評価額を下げて納税額を下げる方法

①小規模宅地の負担軽減措置
相続財産を評価する際、「小規模宅地等の特例」があり、適用されるとあなたが所有する以下の宅地について、相続税が特別に軽減されます。

・自宅の敷地(特定居住用宅地)
・店舗や事業に使っていた宅地(特定事業用宅地)
・人に賃貸していた宅地(貸付事業用宅地)

居住用の土地を配偶者が相続する場合は、条件なしに居住用の小規模宅地の評価減が適用され、相続税評価額の80%が減額されます。ただ、特例が使用できる面積や適応者が決まっているため注意が必要です。

②生命保険で非課税枠を活用
生命保険は、相続人が受け取ると一定額(500万円×法定相続人の数)まで非課税となり節税対策になります。相続発生後の家族の生活費を保障できます。

③会社の資産価値を下げる
税金額を抑えるため、株式の評価額を引き下げることも方法として挙げられます。簡単に言えば、利益が減ることで株式の価値が下がるため、利益を減らすために逓増定期保険、長期平準定期保険に加入するということも考えられます。

前述にあるような保険は保険料の一部損金に計上可能です。結果的に、利益が圧縮され株式の評価額が抑えられることになりまので、これらの保険で、あなたの退職金や死亡退職金の資金の準備もかねることが出来ます。

相続税のしくみをうまく利用する方法

孫や実子の配偶者を養子にして基礎控除額を増やす

相続税の基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算されます。法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額が増え相続税を抑えることができます。ただ、法定相続人になれる養子の人数は税法によって定められているので注意が必要です。また、縁組することで実子と養子が権利で揉めるという可能性もあるので、家族と話し合って決めることをお勧めします。

家族が相続税を納税する際の資金を準備するために…

相続人を受取人にして生命保険に加入しておきましょう。

前にも述べましたが、特に、会社の跡継ぎとなる人物など特定の人に資産を集中させた場合、受遺者以外の相続人の遺留分を侵害してしまったり、自社株の評価によっては相続税が多額になる事もあります。

もし仮にそうなった場合、生前かけていた生命保険で納税資金を用意することができ、相続発生後の家族の生活費を保障できる大変大切なものとなります。相続税の計算の際には「500万円×法定相続人の数」の額について控除を受けられるので、相続税対策としても有効です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。相続対策は早めに実行することによって、ご家族が不要な紛争に巻き込まれることなく節税できる可能性があります。できるだけご家族の負担を軽くし、相続税に対する資金を用意してあげることが一番の策と言えます。

今回ご紹介できなかった様々な方法がありますので、少しでも不安がある方は、相続税専門の税理士への相談をお勧めします。この記事により、相続対策に対して少しでも興味を持っていただけたら幸いです。