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2022.6.29
ローンがある場合の相続対策はどうなる?

故人のローンについて知ることも大切です

皆さんは、故人にローンがあった場合の相続について考えたことはありますか?

相続対策と聞くと、多くの場合残された財産に目が行きがちですが、実は故人のローン(債務)について知ることも相続対策の大切な要素になります。故人からは財産だけではなく、債務も同時に引き継ぐことになるからです。

いざ相続するという立場になるまで、被相続人がローンを支払っているのかどうか、そもそも債務があるのかどうかも確認したことがない方が多いかもしれません。

財産よりも債務の金額が大きくなってしまうというようなリスクを軽減するためにも、今回のコラムでは相続が起こった際のローン対策について書いていきます。相続する立場の方も、される立場の方も是非参考にしていただけたら幸いです。

具体的な債務を知るためには「債務調査」を!

相続が起こった場合、まずは債務額を明確にするために債務調査することをお勧めします。では、具体的にどのように調査していくのか見ていきましょう。

信用情報機関への開示請求

銀行やカードローンなど、金融機関からお金を借りている場合は、下記の機関に開示請求をすれば確認することが出来ます。開示請求する際は、相続人であることを証明する書類が必要です。(必要書類に関しては各機関のHPで確認できますので、申請前にチェックしてみましょう)

期間は最大で1カ月ほどかかることもあるので、余裕をもった準備が必要です。

■クレジット会社からの借入状況の確認:『株式会社CIC』
 https://www.cic.co.jp/
■銀行からの借入状況の確認:『全国銀行個人信用情報センター』   
 https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/
■消費者金融からの借入状況の確認:『株式会社日本信用情報機構(JICC)』
 https://www.jicc.co.jp/

そのほかにも、郵便物・預金口座のチェック抵当権の設定状況も確認しましょう。

ローンを組んでいる場合、定期的な通知や引き落としがあることがほとんどですので、返済の督促状が届いていないか、過去の引き落とし状況なども確認しておくとよいでしょう。また自宅が借金の担保になっていないか不動産の登記情報を取り寄せて確認することも大切です。

ローンを控除する方法はあるの?

債務調査をし、故人にローンがあった場合でも、ローンの返済と相続税支払いの二重苦ということにはなりません。

基本的に相続税は、被相続人が残した借金(亡くなった日時点)等の債務や葬式にかかった費用を差し引いて計算されます。これを債務控除と言います。

債務控除の対象になるのは、「確実と認められる債務」となり、カードローンや自動車ローンなど亡くなった時点での借入金は控除の対象となります。

一方で下記は債務控除の対象外となります。

住宅ローン

ローンを契約する際は、通常団体信用生命保険への加入を求められます。万が一、返済者が亡くなった場合は、保険会社が代わりにローンを負担します。そのため、返済義務がなくなるので債務控除の対象外となります。団体信用生命保険へ加入していない場合には、控除の対象となります。

また以下の2つは控除される可能性もありますが、注意が必要です。

保証債務

主たる債務者が返済不能になった場合に保証人として支払いが必要な債務です。

連帯債務

連帯債務とは複数人で債務をそれぞれ負担していることをいいます。この内、事前に負担する債務の金額が明確な場合や連帯債務者の内に弁済不能な者がいて、求償しても弁済を受ける見込みがなく、他の連帯債務者の弁済額も支払われなければならない場合は、債務控除の対象となります。

先に挙げたように控除の対象となるのは、確実な債務のため、保証債務や連帯債務のように他にも相続人がおり、いくら請求されるかはっきりと確定していない場合には、原則控除の対象とはなりません。

債務の支払いを拒むことはできるの?

相続人が複数いた場合に、遺言にローンの負担割合を記載していたとしても、ローンに限っては遺産分割されず、自動的に相続人に承継されます。

例えば、Aさんが1000万円の負債をかかえたまま亡くなり、法廷相続人が妻・子ども2人の場合、妻500万円、長男250万円、長女250万円という割合でその負債を3人で負担するということです。

したがって、この後説明する免責的債務引受もしくは相続放棄をしない限りは、債務の支払いを拒むことは原則できません。

免責的債務引受

旧債務者が負担しなければならない債務を、相続人の内1人(新債務者)が代わりに引き受け負担することをいいます。

先ほどの家族の例でお話しするならば、長男が妻、長女分の負担分を引き受け1000万円全額の支払いを行うということができます。この契約は、旧債務者・新債務者・債権者の3者間で行われ、債権者の合意を得られれば、従来の債務者は債務を免除されます。

よって、長男だけが債務者になるため、妻、長女は債務とは無関係になり債権者は従来の債務者に対して弁済を求めることができません。

相続放棄

借金だけでなく、不動産などの資産を含め、全ての財産の相続を放棄することです。相続放棄を行うことで、元から相続人ではなかったことになるため、ローンの「当然分割」の義務もなくなります。

ただし、「相続放棄が可能なのは相続が開始したことを知ってから3か月以内」となります。

この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは行えません。債務調査には、長くて1カ月を要することもあるため、被相続人に借金やローンがある場合は、出来るだけ余裕をもって弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか。保証債務や連帯債務など耳慣れない言葉も多かったかもしれませんが、まず被相続人の債務状況を早い段階で把握することが非常に大切です。

万が一、相続する財産よりも負債(借金)の方が多くなる場合は、相続放棄を行うことも一つの手段です。ただ、一度相続放棄を行ってしまうと、引き継ぎたい土地や建物などの資産もすべて手放すことになりますので、その場合は専門家に相談するなど慎重にご判断ください。

また、借金が少なかったとしても相続税の支払いに困窮する場合もありますので、相続人になる可能性がある場合には早めに相続専門の税理士へ相談することをお勧めします。